海抜710m、ドゥエロ河のすぐ横に拓かれた平坦な畑は、偉大なベガ・シシリアに隣接している。1980年頃に植樹された40haの畑から自社でワインを造る傍ら、2004年までピングスのピーター・シセックにその一部を貸していたというのだから、土地のポテンシャルは明らかだ。その当時からフィンカ・ビリャクレセスのワインは高い評価を得ていたが、2003年に醸造所を譲り受けたゴンサロ・アントンはより高みを目指すため、植樹も含めて畑を整備し、セラーに最新設備を整えるなど、1年かがりで大規模な改修を行った。
ゴンサロはエル・ブリのフェラン・アドリアなどスペインのトップシェフ達と親交が深く、自らもバスク地方でミシュラン1ツ星のレストラン、サルディアランを経営する人物である。自分や親しい友人のレストランに見合うモダンで洗練されたワインを造るため、クオリティの産地にある最高の醸造所を求めた彼にとってフィンカ・ビリャクレセスは申し分ない選択だった。
新たに植樹した畑も含め、栽培にはビオロジックを採用。元々カビ病が発生しにくい気候だが、最大限の通気性と日照を得るために手作業でのキャノピーマネージメントは欠かさない。また、河由来の砂利を多く含む砂質土壌は保水性に乏しく、ブドウの生育を健全に保つために干ばつ対策はより徹底している。
これらの入念な畑仕事と、徹底的な剪定と芽かきにより得られた低収量のブドウは区画ごとに収穫され、さらに選果台で優良なブドウのみが厳選される。非常に清潔で機能的なセラーには容量・材質が異なる様々な発酵槽が区画によって使い分けられ、熟成にはフランスのダルナジュー社やタランソー社のバリックが用いられる。ダルナジュー社は、ボルドーの一流シャトーであっても同社の眼鏡にかなった生産者しか取引できないことで知られる。樽職人のサインがひとつひとつ刻まれたバリックはクオリティの証であり、ワインがオークの強さに負けない力を秘めていることの証明でもある。因みに、スペインでダルナジュー社のバリックの使用が認められているのは、ベガ・シシリア、ピングス、そしてフィンカ・ビリャクレセスのみだという。
現在3種類のワインを手掛けているが、クリアンサやレゼルバという、時には玉石混合の従来のスペインワインのカテゴリーにはこだわらず、クオリティのみを追求している。世界的に非常に高い評価を受けているが、輸出よりもスペイン国内での販売、特に顧客と生産者のそれぞれの顔が見える直接販売を重視しており、そのリストにはマルティン・ベラサテギやアルサックなど、一流のレストランが名を連ねる。現オーナーのゴンサロが目指した通り、フィンカ・ビリャクレセスは現代のガストロノミー最高のワインを世に送り出している。
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